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ピカソ「泣く女」【なんでこれがすごいの?だから子供は絵を描くんだ!(アートセラピー)】Part 2

ヒトはなんで絵を描くの?絵を描くために必要な能力は、器用さ(協調運動)、イメージ力(概念化)、自分語り(社会性)であることがわかりました。言い換えれば、子供が絵を描くのは、器用になりたいから、イメージしたいから、誰かに伝えたいからです。それでは、そもそもヒトはなぜ絵を描くようになったのでしょうか?ここから、絵を含むアートの起源を3つの段階に分けて迫ってみましょう。(1)きれいに石器をつくる―協調運動約300万年前に、人類は部族の集団をつくって助け合うようになりました。約250万年前には、獲物の肉を切る時に石器を使うようになりました。また、持ちやすさや丈夫さの観点から、石器(握斧)の形は、左右対称の涙型に洗練されていきました。これが、アートの起源です。1つ目の段階は、きれいに石器をつくることです。まず石器を使うためには、切る位置を見定めて指先の力を加減しながら正確に刃を打ち込む必要があります3)。そして、さらに石器をきれいにつくるためにも、同じような能力が必要になります。これは、器用さ(協調運動)の起源です。その形の美しさは、同時にその持ち主(主に男性)の生存能力として異性へのアピールになったでしょう。これは、生殖の適応度を高めます。ちなみに、ニワシドリという鳥のオスは、メスを向かい入れるために、「庭師」のように、花、木の実、貝殻、石などで巣の周りに、立派な「庭」をつくることで知られています4)。この「美的センス」は、人類の石器と同じように、メスに対してオスが適応度の高いことを示すシグナリングであると考えられています。シグナリングの詳細については、関連記事1をご覧ください。(2)ものにイメージを重ね合わせる―概念化約20万年前に、人類は言葉を話すようになり、言葉によって世界を細かく分けることができるようになりました。約9万年前に、貝の首飾りを信頼のシンボルとして見立て、一緒に埋葬するようになりました4)。約8万年前に、人類は石片に格子模様を刻むようになり、オーカ(着色剤)で顔をはじめとするボディペインティングをして、異性へのセックスアピールをするようになりました。これらは、見た目においてのシンボルの起源です。このようにシンボルを用いるようになってから、助け合うための相手の視点に立つ心理(心の理論)は、人間だけでなく、動物をはじめあらゆる自然に向けられ、それらとも協力関係を築こうとしたでしょう。これがアニミズムであり、トーテミズムです。ものに心が宿るという発想から、石片や動物の骨・角・象牙などが、形の似ている動物に見立てられて彫り込まれたでしょう。つまり、最初の彫刻アートは、最初から動物をイメージして作ったのではなく、最初はそう見えたからそれを補うように彫り込んでいったのです。2つ目の段階は、ものにイメージを重ね合わせることです。先ほど紹介したように、目がない顔の絵に目を描き入れる幼児のように、すでに「ある」ものを手がかりに「ない」ものを補ってイメージを膨らませていくことです。これは、イメージ力(概念化)の起源です。やがて、誰かが作ったものを別の誰かが真似して、より洗練されたものになったでしょう。3万数千年前には、動物の頭と人間の体を組み合わせた半人半獣の象牙アート「ライオンマン」が作られました。まさに、模倣から創造です。なお、概念化は、イメージ力(視覚的な認知能力)だけでなく、言語能力(聴覚的な認知能力)もあります。この起源については、関連記事2をご覧ください。(3)集団で共有する―社会性約5万年前に、洞窟の中で壁画が描かれるようになりました。実際の壁画には、岩肌の凸凹や亀裂を利用してウシやシカなどの輪郭がきれいに描かれています。埋まった小石は目として描かれています。このような壁画も、最初から凸凹や亀裂があえて利用されたのではなく、最初はその凸凹や亀裂があるおかげで、やっとウシやシカの形がイメージされるようになったと考えられます。その壁画を目の前にして、部族のメンバーが集まり、狩猟の場所を占ったり、狩猟の仕方などの生活の知恵や部族の掟を次の世代に伝えていったのでしょう。そして、それらの言い伝えは、より洗練された壁画としてまた描き直されていったのでしょう。3つ目の段階は、部族集団で共有することです。言葉に加えて、壁画があることによって、より具体的にイメージすることができて、やり方や仕組みの理解がしやすくなります。私たち現代人も、言葉だけでなく、イラストや図があった方がより頭に入りやすいです。これは、部族集団の適応度を高めます。そして、これが文化という社会性の起源です。実際に、壁画が描かれるようになった約5万年前から、先ほどの「ライオンマン」のようなアートをはじめ、道具、建築、音楽、文学、宗教、政治などの文化が爆発的に発展していきました。これは、「文化のビッグバン」と呼ばれています。なお、文化は、形として残る遺跡(視覚的な文化)と、言葉によって伝わる言い伝え(聴覚的な文化)に分けることもできます。言い伝えの起源の詳細については、言い伝えを噂話と置き換えて、関連記事3をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」【下平博士のDIノート】第128回

標的部位で持続的に放出される潰瘍性大腸炎薬「コレチメント錠9mg」今回は、潰瘍性大腸炎治療薬「ブデソニド腸溶性徐放錠(商品名:コレチメント錠9mg、製造販売元:フェリング・ファーマ)」を紹介します。本剤は、標的部位の大腸にブデソニドが送達され、持続的に放出されるように設計されている1日1回服用の薬剤で、良好な治療効果や服薬アドヒアランスが期待されています。<効能・効果>活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)の適応で、2023年6月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与します。投与開始8週間を目安に本剤の必要性を検討し、漫然と投与を継続しないように留意します。<安全性>2~5%未満に認められた副作用として潰瘍性大腸炎増悪があります。2%未満の副作用は、乳房膿瘍、感染性腸炎、乳腺炎、口腔ヘルペス、不眠症、睡眠障害、腹部膨満、口唇炎、ざ瘡、湿疹、蛋白尿、月経障害、末梢性浮腫、白血球数増加、尿中白血球陽性が報告されています。<患者さんへの指導例>本剤は、大腸に送られて持続的に炎症を鎮める潰瘍性大腸炎活動期の薬です。服薬時にかまないでください。生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)を接種する際には医師に相談してください。疲れを残さないよう十分な睡眠と規則正しい生活が重要です。消化の悪い繊維質の多い食品や脂肪分の多い食品、香辛料などを避けて、腸に優しい食事を心がけましょう。<Shimo's eyes>潰瘍性大腸炎は、活動期には下痢や血便、腹痛、発熱などを伴い、寛解と再燃を繰り返す炎症性腸疾患であり、わが国では指定難病に指定されています。潰瘍性大腸炎の活動期には、軽症~中等症では5-アミノサリチル酸製剤が広く用いられ、効果不十分な場合や重症例にはステロイド薬などが投与されます。ステロイド抵抗例ではタクロリムスや生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ阻害薬などが使用されます。本剤の特徴は、MMX(Multi-Matrix System)技術を用いた薬物送達システムにあり、pH応答性コーティングにより有効成分であるブデソニドを含むマルチマトリックスを潰瘍性大腸炎の標的部位である大腸で送達し、親水性基剤と親油性基剤がゲル化することでブデソニドを持続的かつ広範囲に放出させます。また、本剤の有効成分であるブデソニドはグルココルチコイド受容体親和性が高いステロイド薬であり、局所的に高い抗炎症活性を有する一方、肝初回通過効果によって糖質コルチコイド活性の低い代謝物となるため、経口投与によるバイオアベイラビリティが低いと考えられ、全身に曝露される糖質コルチコイド活性の軽減が期待されるアンテドラッグ型のステロイドとなります。本剤は1日1回投与の経口薬であることから、良好な服薬利便性や服薬アドヒアランスも期待でき、海外では2023年3月現在、75以上の国または地域で承認されています。なお、本成分を有効成分とする既存の潰瘍性大腸炎治療薬には、直腸~S状結腸に薬剤を送達するブデソニド注腸フォーム(商品名:レクタブル2mg注腸フォーム)がありますが、本剤は大腸全体が作用部位となる点に違いがあります。本剤の主な副作用として、潰瘍性大腸炎の増悪が2~5%未満で報告されています。本剤はほかの経口ステロイド薬と同様に、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、クッシング症候群、骨密度の減少、消化性潰瘍、糖尿病、白内障、緑内障、精神障害などの重篤な副作用に注意が必要です。本剤投与前に水痘または麻疹の既往歴や予防接種の有無を確認しましょう。製剤の特性を維持するために、本剤を分割したり、乳鉢で粉砕したりすることはできません。患者さんにもかんで服用しないように伝えましょう。潰瘍性大腸炎治療の新たな選択肢が増えることで、患者さんのQOL向上が期待されます。

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ルキソリチニブクリーム、白斑に有効/NEJM

 白斑に対するJAK阻害薬ルキソリチニブ(本邦では骨髄線維症、真性多血症の適応で承認)のクリーム製剤は、基剤クリーム(対照)よりも病変部の再色素沈着を拡大したことが示された。安全性については最も多く報告された有害事象は、塗布部におけるにきびやかゆみであった。米国・タフツ医療センターのDavid Rosmarin氏らによる、2件の第III相二重盲検溶媒対照無作為化試験の結果で、同剤については白斑成人患者を対象に行った第II相試験で、再色素沈着をもたらしたことが報告されていた。著者は今回の結果を踏まえて、「有効性および安全性について、より大規模かつ長期の試験を行い確認することが必要である」とまとめている。NEJM誌2022年10月20日号掲載の報告。2件の無作為化試験TRuE-V 1とTRuE-V 2で評価 2試験は、Topical Ruxolitinib Evaluation in Vitiligo Study 1(TRuE-V 1)と2(TRuE-V 2)で、北米および欧州で、12歳以上、総体表面積の10%以下に色素脱失を有する非分節型白斑患者を対象に行われた。 患者を2対1の割合で、ルキソリチニブ1.5%クリーム群または対照群に無作為に割り付け、顔面および体幹のすべての白斑病変部に1日2回、24週間塗布した。その後は、全患者について52週までルキソリチニブ1.5%クリーム塗布を可能とした。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点の顔面Vitiligo Area Scoring Index(F-VASI、範囲:0~3、高スコアほど顔面の白斑面積が大きいことを示す)の低下(改善)が75%以上(F-VASI75)とした。主な副次エンドポイントは5つで、Vitiligo Noticeability Scale(VNS)の改善などが含まれた。24週時点のF-VASI75達成患者割合、対照との相対リスクは2.7~4.0 TRuE-V 1は2019年9月20日~2021年10月21日(北米29施設と欧州16施設で330例登録)、TRuE-V 2は2019年10月3日~2021年10月1日に行われ(同32施設と17施設で344例登録)、合計674例が登録された。TRuE-V 1で無作為化を受け有効性・安全性の解析に包含されたのは330例、TRuE-V 2では有効性解析には331例が、安全性解析には343例が包含された。 24週時のF-VASI75達成患者割合は、TRuE-V 1ではルキソリチニブクリーム群29.8%、対照群7.4%であった(相対リスク:4.0、95%信頼区間[CI]:1.9~8.4、p<0.001)。TRuE-V 2ではそれぞれ30.9%、11.4%であった(2.7、1.5~4.9、p<0.001)。 副次エンドポイントの結果も、ルキソリチニブクリームが対照よりも優れることを示すものであった。 52週間ルキソリチニブクリームを塗布された患者において、有害事象の発生は、TRuE-V 1で54.8%、TRuE-V 2で62.3%。最も頻繁に報告された有害事象は、塗布部のにきび(TRuE-V 1で6.3%、TRuE-V 2で6.6%)、鼻咽頭炎(5.4%、6.1%)、塗布部のかゆみ(5.4%、5.3%)であった。

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tapinarofクリームが尋常性乾癬に有効~第III相試験/NEJM

 軽度~重度の尋常性乾癬患者において、tapinarof 1%クリーム1日1回12週間塗布は、対照(基剤)と比較して重症度を有意に改善したが、局所および頭痛などの有害事象も伴った。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のMark G. Lebwohl氏らが、tapinarofの2件の無作為化第III相試験「PSOARING 1」および「PSOARING 2」の結果を報告した。tapinarofは、インターロイキン(IL)-17と皮膚バリア機能に関与するフィラグリンおよびロリクリンの発現を調節するアリル炭化水素受容体調節薬で、クリーム剤が乾癬の治療薬として検討されており、第II相試験で有効性が示されていた。今回の結果を受けて著者は、「乾癬に対するtapinarofクリームの有効性と安全性を既存の治療薬と比較検討するためには、より大規模で長期的な試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2021年12月9日号掲載の報告。tapinarofの有効性をPGAスコアで評価 研究グループは、ベースライン時の医師による全般的評価(PGA)スコア(範囲:0~4、スコアが高いほど乾癬の重症度が高いことを示す)が2~4(軽度~重度)で、病変面積が体表面積(BSA)の3~20%の成人乾癬患者を、tapinarof 1%クリーム(tapinarof群)または基剤クリーム(対照群)の2群に、2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回12週間塗布した。 主要評価項目はPGA奏効(12週時のPGAスコアが0~1、かつベースラインから2ポイント以上低下)、副次評価項目は、それぞれ12週時における、PASI 75(乾癬面積重症度指数[PASI]スコアのベースラインから75%以上改善)を達成した患者の割合、PGA0/1(PGAスコア0または1)を達成した患者の割合、病変面積のBSAに占める割合のベースラインからの平均変化量、PASI 90を達成した患者の割合とした。また、患者報告アウトカムとして、そう痒重症度スコア(Peak Pruritus Numerical Rating Scale[PP-NRS]:かゆみなし[0]~想像できる限り最悪のかゆみ[10])のベースラインからの平均変化量および4ポイント以上改善した患者の割合、PP-NRS総合スコア、皮膚疾患特異的QOL(DLQI)合計スコア、乾癬症状日誌(Psoriasis Symptom Diary)スコアのベースラインからの平均変化量を評価した。PGA奏効率、tapinarof群35%、対照群6% 「PSOARING 1」および「PSOARING 2」において、それぞれ692例および674例がスクリーニングされ、510例および515例が登録された。 PGA奏効率は、「PSOARING 1」でtapinarof群35.4%、対照群6.0%、「PSOARING 2」ではそれぞれ40.2%および6.3%であった(いずれの試験もvs.対照群のp<0.001)。副次評価項目および患者報告アウトカムについても、主要評価項目と同様の結果が得られた。 有害事象については、tapinarof群で毛包炎、鼻咽頭炎、接触性皮膚炎、頭痛、上気道感染症、そう痒などが認められた。

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デルゴシチニブ軟膏、小児ADへの有効性と安全性を確認

 昨年、世界で初めてわが国で承認された、アトピー性皮膚炎(AD)に対する外用JAK阻害薬デルゴシチニブ軟膏(商品名:コレクチム軟膏)について、東京慈恵会医科大学名誉教授の中川 秀己氏らが小児(2~15歳)に対する有効性と安全性を評価した56週の第III相無作為化二重盲検基剤対照試験の結果が、Journal of the American Academy of Dermatology誌2021年10月号で報告された。デルゴシチニブ軟膏塗布患者で重篤有害事象の報告なし 56週にわたり塗布群は有意な改善を示し、忍容性は良好であったという。上市されたデルゴシチニブ0.5%軟膏の適応対象は、当初16歳以上の成人であったが、本年5月に小児への適応拡大が承認されている。 小児ADに対するデルゴシチニブ軟膏の有効性と安全性を評価する試験は、2つのパート構成で行われた。パート1は、4週間の二重盲検無作為化試験で、2~15歳の日本人AD患者を1対1の割合で無作為にデルゴシチニブ0.25%軟膏群または基剤群に割り付け、追跡評価した。パート2は、52週間の非盲検延長試験で、適格患者(パート1試験完了者と、パート1試験中にAD増悪のため早期にパート2試験に組み込まれた患者)はデルゴシチニブ0.25%軟膏またはデルゴシチニブ0.5%軟膏を投与された。 デルゴシチニブ軟膏の小児ADに対する有効性と安全性を評価する試験の主な結果は以下のとおり。・パート1試験では、137例が無作為化を受けた(平均年齢8.3歳、男子51.1%、平均罹患期間6.0年)。試験を完了したのは、デルゴシチニブ0.25%軟膏群が62/69例(89.9%)、基剤群が48/68例(70.6%)であり、パート2試験への早期組み込み被験者はそれぞれ7例(10.1%)、19例(27.9%)であった。・パート2試験の被験者は計135例で、118例(87.4%)が試験を完了した。・パート1試験の開始時点で、約半数の患者(54.7%)が中等症AD(IGAスコア3)、21.9%が重症AD(IGAスコア4)であった。・パート1試験終了時の主要有効性エンドポイント(修正Eczema Area and Severity Index[mEASI]スコアのベースラインからの最小二乗平均変化率)は、デルゴシチニブ0.25%軟膏群(-39.3%)が基剤群(+10.9%)よりも有意に低下した(p<0.001)。・パート2試験でも、56週間にわたってmEASI、IGAおよびかゆみのスコアの改善が認められた。・パート1および2試験を通して、デルゴシチニブ軟膏塗布患者115/134例(85.8%)で有害事象が報告されたが、大半はデルゴシチニブ軟膏による治療とは無関係とみられ、関連していたのは13例(9.7%)ですべて軽度であった。重篤有害事象の報告例はなかった。・本試験の対象患者は日本人のみであり、パート2試験で対照群が設定されておらず、レスキュー治療が許容されていた点において結果は限定的である。

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コロナワクチンのアナフィラキシー、患者さんに予防策を聞かれたら?

 7月に入り、新型コロナワクチン接種が65歳未満でも本格化している。厚生労働省の副反応報告1)によると、現時点では「ワクチンの接種体制に直ちに影響を与える程度の重大な懸念は認められない」との見解が示されており、アナフィラキシーやその他副反応のリスクよりも新型コロナの重症化予防/無症状感染対策というベネフィットが上回るため、12歳以上へのワクチン接種は推奨される。 しかし、接種対象者の年齢範囲が広がることで問題となるのが、SNS上での根拠のないワクチン批判である。その要因の1つが「アナフィラキシー」だが、患者自身で出来る予防策はあるのだろうかー。今回、日本アレルギー学会のCOVID-19ワクチンに関するアナウンスメントワーキンググループのひとりである中村 陽一氏(横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター センター長)に話を聞いた。ワクチンだけを恐れる矛盾を指摘 まず、中村氏はワクチン不安に陥る前に、あらかじめ知っておくべきこととして2点を提示した。一つは「腕の痛みなどの注射部位反応や筋肉痛、頭痛、寒気、倦怠感、発熱などの反応は、ワクチンに対する身体の正常な免疫反応を反映している」ということで、それらは数日以内に消失する。もう一つは「わが国における新型コロナワクチン接種後に起こったアナフィラキシーの報告で信頼に足るものは100万回あたり7件と報告されており、医療機関で使用される造影剤(100万回あたり約400件)や肺炎などの感染症で使用される抗生物質(100万回あたり100~500件)に比べると極めて少ない」という事実である。今回の新型コロナワクチンに限らず一般にワクチンはほかの医薬品に比べてアナフィラキシーが少ないと言われているにもかかわらず、接種を怖がる人が多いのは、「一部マスコミの注意喚起が強調され過ぎたのかもしれない。ただし、ごく稀とはいえ誰にでも新型コロナワクチンによるアナフィラキシーがあり得るのは事実であり、個人的にできる予防策があればそれに越したことはない」とも話した。 アナフィラキシーを増強させる促進要因(飲酒、運動、月経前状態など)2)はいくつか明らかになっているものの、実際にアナフィラキシーが発症する際にはさまざまな要因が絡み合うため、「これという確かな予防策は存在しない」と同氏はコメント。しかし、予防策が断定できなくとも患者が心得ておくべきは、「ワクチン接種日の数日前から体調を整えておくこと」であり、医療者の役割は「自分の患者からワクチン接種の可否について相談された場合にリスク因子の有無を正確に見極めること」と話した。その際に参考になるのは、アナフィラキシーの主な原因が新型コロナワクチンの主成分ではなく添加物(ポリエチレングリコール[PEG]やポリソルベートなど)との報告である。実際にファイザー製やモデルナ製にはPEGが、アストラゼネカ製にはPEGに交差反応性のあるポリソルベート80が添加されている。 一方、これらの賦形剤は多くの医薬品(注射薬、錠剤、外用薬、など)や化粧品に(PEGはマクロゴールの名称で)広く含有されており、同氏は「私の所属する医療機関で扱っている医薬品4,000種類以上に含まれている。そして、多くの患者は普段から定期的にこれらを体内に取り込んでいることになる。もちろん、その接種経路により症状誘発の程度が異なることはあり得るが、自分が担当する患者さんにワクチン接種の可否を訊ねられた際には、定期処方薬にそれらが含有されていることを確認した上で、『あなたは一般に新型コロナワクチンの原因と言われている成分を毎日服用しているのに普段何ともないのですから、そんなに心配することはないですよ』とアドバイスをして安心していただくようにしている」と、添加物の実状と患者の不安を払拭させるような声掛け方法を例示した。 現在、PEGは日本薬局方には医薬品添加物として、分子量200、300、400、600、1000、1500、1540、4000、6000、20000が登録されており、添付文書ではマクロゴール◯◯や下記のようにPEG◯◯などと記載されていることが多い(◯◯は分子量)。<各ワクチンに含有される主な添加物>・コミナティ筋注(ファイザー):2-[(ポリエチレングリコール)-2000]- N,N-ジテトラデシルアセトアミド・COVID-19ワクチンモデルナ筋注(モデルナ):λ1, 2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メチルポ リオキシエチレン(PEG2000-DMG)、トロメタモール(アナフィラキシー報告あり)・バキスゼブリア筋注(アストラゼネカ):ポリソルベート80アナフィラキシーの“既往なし”でも注意したい患者 加えて、PEGやポリソルベートに対するアレルギーが考えにくい場合でも、ワクチン前に受診を薦めたい患者として「喘息患者のなかでもコントロール不良な人、そして、“かくれ喘息”の人」を挙げた。喘息はアナフィラキシーの重症化リスクの1つであるため、「喘息治療をしていないが、ゼーゼー、ヒューヒューと喘息様の症状を有する人、治療を続けていても発作が多かったりコントロールが不良だったりする人は、ワクチン前にしっかり診断と治療を受け、コントロールしておくことも重要」とし、接種後には「通常の2倍の時間、30分間は経過観察が必要」とも話した。 これらを踏まえ、アナフィラキシー発症リスクの高い例と注意すべき患者像を以下のように示す。<アナフィラキシーに注意すべき患者像>( )内は主な可能性・高齢者(薬剤に過敏歴がある場合、化粧品使用とその経験が長い)・女性(化粧品の使用率が高く、PEGへの経皮感作の可能性がある)・喘息の既往(コントロール不良、発作が多い)、かくれ喘息<アナフィラキシーの発生リスクを探る>(優先順)1)アナフィラキシーに最もリスクがある患者は“PEGやポリソルベートによるアナフィラキシー歴あるいは1回目のワクチン接種でアナフィラキシーがあった”人。その場合には接種を見送る/2回目接種を見送る必要がある。2)次に注意すべきは、“原因不明あるいは不特定多数の医薬品などによるアナフィラキシー歴(PEGやポリソルベートに対するアレルギーの可能性を有する)”がある人。この人は可能な限り主治医に事前相談し、集団接種会場ではなく医療機関での個別接種が望ましい。3)“アナフィラキシー歴はあるが、PEG・ポリソルベートなどの賦形剤以外の物質(食物、金属など)が原因として確定している”人は通常通りワクチン接種を行っても差し支えないと言える。 アレルギー反応にはアナフィラキシーや花粉症、食物アレルギーなどを引き起こすI型、II型(血小板減少症など)、III型(SLEや関節リウマチなど)、IV型(接触皮膚炎など)が存在するが、食物アレルギーはアナフィラキシーと同型に分類されるため、食物アレルギーを抱える患者は接種に不安を抱え、ためらうこともあるかもしれない。これについては、日本アレルギー学会が今年3月に公開したアナウンスメント3)にも「少なくとも現時点では花粉、食物などの特定の抗原に対する I 型アレルギーや、アナフィラキシー症状を伴わない喘息、アトピー性皮膚炎などのアトピー疾患であることが、新型コロナウイルスワクチンに対する過敏性を予測するものではないことを意味する」と示されている、と強調した。医療者としての声掛けー新型コロナワクチンに不安な被接種者へ 新型コロナに罹患した際の症状は死に至る場合もある。感染から回復しても長引く後遺症(疲労感・倦怠感や息切れ…)に悩まされることになり、それらの症状からいつ完全回復を遂げられるかはまだ明らかにされていない。ワクチン接種時の一時的な副反応症状(発熱、倦怠感など)と発症率が低く適切な治療により致命的になることがほとんどないアナフィラキシー、どちらのリスクが自分にとって危険であるのかを天秤にかけた場合、「ワクチンを接種せずに新型コロナに罹患することだけは避けるべきであるのは自明」と同氏は繰り返した。 最後に、ワクチン接種に関し医療者が患者にできることとして、「今後の変異株の拡大などにより若い人でも重症化することが懸念されている現状では、患者にワクチンを諦めさせるのではなく、推奨することが大切なのではないか」とワクチン接種が患者の命を救う最善の手立ての1つであることを強く訴えた。中村 陽一(なかむら よういち)氏横浜市立みなと赤十字病院アレルギーセンター長1955年香川県生まれ。81年徳島大卒。91年医学博士取得および米国ネブラスカ大学留学。2000年国立病院機構高知病院臨床研究部長を経て05年より現職および昭和大学医学部客員教授。日本アレルギー学会功労会員。同学会アナフィラキシー対策委員会委員長。

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簡易懸濁法に適した整腸剤へ変更して介護負担を軽減【うまくいく!処方提案プラクティス】第31回

 今回は、処方頻度の高い整腸剤に関する処方提案を紹介します。乳酸菌製剤と酪酸菌製剤では、高温条件で簡易懸濁した場合、形状に差があることがあります。その特性を利用し、介護者の負担を軽減することができました。患者情報94歳、女性(長女と同居)基礎疾患認知症、便秘症、胆石症(10年前に手術)、繰り返す尿路感染症介護度要介護2訪問診療の間隔2週間に1回処方内容1.耐性乳酸菌製剤散 3g 分3 朝昼夕食後2.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 朝昼夕食後3.スルファメトキサゾール・トリメトプリム錠 1錠 分1 朝食後4.グリセリン浣腸60mL 便秘時 1個使用本症例のポイントこの患者さんは、排便コントロールがあまり良好ではなく、時折宿便のような状態になって浣腸が必要になるため、介護負担が大きいということを同居の長女から相談されました。また、錠剤を噛み砕いてしまうことが多いため、長女が簡易懸濁法を用いて服薬させていましたが、懸濁すると薬剤がのり状になり、本人が口中の不快感を訴えて服用させづらいという話も伺いました。排便コントロールの改善のため、酸化マグネシウムの増量や刺激性下剤の追加などを検討しようと考えましたが、長女は長年服用している薬なので、できるだけ今の治療に近いまま調整してほしいという意向でした。そこで、本人および長女の服用・介護負担軽減のため、まず耐性乳酸菌製剤散に焦点を当てて検討することにしました。耐性乳酸菌製剤散は、賦形剤としてデンプンが含有されているため、高温条件下ではのり状になって固まりやすく、懸濁しにくい薬剤です。また、薬効への影響はないとされていますが、懸濁時の温度によって含有されている乳酸菌数が減少することも知られています1,2)。<耐性乳酸菌製剤を50℃温湯と常温に入れて自然放置した時の耐性乳酸菌数の比較>(参考文献2より改変)これらのことから、芽胞形成菌である酪酸菌が含有された酪酸菌製剤錠のほうが適しているのではないかと考えました。芽胞形成菌はその名のとおり芽胞を形成することで、高温条件下でも菌数が減少しにくく、人為的な抗菌薬耐性を付与しなくても抗菌薬の影響を受けにくいという特徴があります3)。そこで、耐性乳酸菌製剤から酪酸菌製剤への変更を提案することにしました。処方提案と経過事前に医療機関に、長女とのやりとりと上記の文献データをトレーシングレポートとしてFAX送信しました。そのうえで医師に電話で疑義照会し、酪酸菌製剤 3錠 分3 毎食後への変更を提案しました。医師は、すでにトレーシングレポートの内容を把握しており、薬剤的な懸念があり介護者の負担も大きいので、提案どおりに変更してみようと承認を得ることができました。処方内容の変更後、長女からは、のり状になることもなく服薬させることができるようになり、排便コントロールも良好になったため浣腸を使用することは減ったと話を伺うことができました。その後も、時折グリセリン浣腸を使用することはありましたが、排便コントロールが悪化することなく経過しています。1)ビオフェルミン製薬 学術部門開発部資料2)藤島一郎監修, 倉田なおみ編集. 内服薬 経管投与ハンドブック 〜簡易懸濁法可能医薬品一覧〜 第4版. じほう;2020.3)江頭かの子ほか. 週刊日本医事新報. 2014;4706:67.

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双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」【下平博士のDIノート】第56回

双極性障害のうつ症状の適応も有する非定型抗精神病薬「ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg」今回は、抗精神病薬/双極性障害のうつ症状治療薬「ルラシドン塩酸塩(商品名:ラツーダ錠20mg/40mg/60mg/80mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、長期間の治療が必要な統合失調症や双極性障害のうつ症状の患者に対し、忍容性を保ちながら適切な治療効果を維持することが期待されています。<効能・効果>本剤は、統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年6月11日より発売されています。<用法・用量>《統合失調症》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回、食後に経口投与します。なお、年齢、症状により適宜増減しますが、1日量は80mgを超えることはできません。《双極性障害におけるうつ症状の改善》通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20mgから開始し、1日1回、食後に経口投与します。年齢、症状により適宜増減しますが、増量幅は20mgとして、1日量60mgを超えることはできません。<安全性>国内で実施された臨床試験において、安全性評価対象876例中338例(38.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、アカシジア75例(8.6%)、悪心40例(4.6%)、統合失調症29例(3.3%)、傾眠28例(3.2%)、頭痛、不眠症各25例(2.9%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、遅発性ジスキネジア、高血糖、白血球減少(いずれも1%未満)、悪性症候群、痙攣、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、肺塞栓症、深部静脈血栓症、横紋筋融解症、無顆粒球症(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳内のドパミン、セロトニンなどのバランスを整えることで、幻覚、幻聴、妄想、不安、緊張、意欲低下などの症状を和らげ、また、双極性障害におけるうつ症状を改善します。2.薬の飲み始めや増量した時期に低血圧が起こることがあります。眠気が出たり、注意力・集中力・反射運動能力が低下したりすることもあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.薬を飲み始めてから、じっとしていられない、興奮が強くなる、ちょっとしたことで怒りっぽくなるなど、普段と異なる様子がみられた場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.血糖値が上がることがあるので、本剤を服用後に激しい喉の渇きを感じたり、尿の回数や量が増えたりしたら連絡してください。5.動きが遅い、手足の震えやこわばり、呼吸回数の減少、低血圧などが現れたらご相談ください。6.アルコールは薬の効果を強めることがあるので、本剤を服用中は飲酒を控えてください。また、グレープフルーツを含む飲食物によっても、薬の作用が強く現れることがあるので、本剤を服用中は摂取しないよう気を付けてください。<Shimo's eyes>本剤は第2世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)で、SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)に分類されます。既存のSDA内服薬としては、リスペリドン(商品名:リスパダール)、ペロスピロン(同:ルーラン)、ブロナンセリン(同:ロナセン)、パリペリドン(同:インヴェガ)の4剤があり、本剤が5番目となります。本剤は、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2A受容体および5-HT7受容体に対してはアンタゴニスト、5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして作用する一方で、抗ヒスタミン作用や抗コリン作用は少ないと考えられています。そのため、本剤は既存のSDAにはない、統合失調症における幻聴や妄想といった陽性症状、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状の改善のほか、不安や落ち込みといったうつ症状の改善も期待できます。統合失調症患者もしくは双極I型障害うつ患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤の忍容性に関して大きな問題は認められませんでした。また、長期投与試験において、統合失調症患者の精神症状に対する効果および双極性障害患者のうつ症状に対する効果は、それぞれ52週にわたり維持されたことが確認されています。2020年5月現在、統合失調症治療薬として、欧米を含む47の国と地域で承認されており、また、双極I型障害のうつ症状治療薬としては米国を含む7つの国と地域で承認されています。海外の最新治療ガイドラインでは、体重増加、糖代謝異常などの代謝系副作用が少ないなどの観点から統合失調症に対して推奨され、双極性障害におけるうつ症状では第一選択薬の1つとして推奨されています。処方時の注意点として、中等度以上の腎機能・肝機能障害のある患者では、投与量の制限があるため、投与量を適宜減量し、慎重に投与することとされています。また、本剤は、1日1回食後に服用することで最高血中濃度が引き上げられ、効果が継続するため、食後投与を厳守する必要があります。なお、本剤と同様に「双極性障害におけるうつ症状」の適応を有するクエチアピンフマル酸塩徐放錠(商品名:ビプレッソ)は就寝前投与なので、服用時点を混同しないように注意しましょう。相互作用としては、CYP3A4の基剤であるため、クラリスロマイシン、アゾール系抗真菌薬などのCYP3A4を強く阻害する薬剤や、リファンピシンなどのCYP3A4を強く誘導する薬剤は禁忌です。アルコールやグレープフルーツ含有食品も併用注意になっており、摂取には注意が必要であることを伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ラツーダ錠20mg/ラツーダ錠40mg/ラツーダ錠60mg/ラツーダ錠80mg

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オーソライズド・ジェネリックで逆戻りが約3割低下/BMJ

 先発医薬品(branded drug products)からオーソライズド・ジェネリック医薬品(authorized generic drug products)へ切り替えた患者は、先発医薬品からジェネリック医薬品(generic drug products)への切り替え例に比べ、先発医薬品への再切り替えの割合が低いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のRishi J. Desai氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2018年4月3日号に掲載された。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と有効成分は同じだが、外観や賦形剤が異なる後発薬であり、オーソライズド・ジェネリック医薬品は、先発医薬品を開発した製薬企業が製造したジェネリック医薬品であるため、両者は有効成分、外観、賦形剤が同じである。先発医薬品とジェネリック医薬品の外観、賦形剤の違いは、ジェネリック医薬品への否定的な見方に寄与する可能性があり、先発医薬品への逆戻りは医療費の増大を招くという。オーソライズド・ジェネリック医薬品切り替え患者の先発薬への再切り替え状況 研究グループは、先発医薬品から、オーソライズド・ジェネリック医薬品に変更した患者またはジェネリック医薬品に変更した患者が、再び先発医薬品に変更する割合を比較する観察的コホート研究を行った(米国食品医薬品局[FDA]の助成による)。 解析には、2004~13年の米国の民間保険(大規模な商業医療保険)の加入者(プライマリ・コホート)と、2000~10年の公的保険(メディケイド)の加入者(再現コホート)のデータを用いた。 8つの試験薬(アレンドロン酸錠、アムロジピン錠、アムロジピン/ベナゼプリル・カプセル、サケカルシトニン点鼻スプレー、エスシタロプラム錠、glipizide徐放錠、キナプリル錠、セルトラリン錠)のうち1つの先発医薬品投与を受け、ジェネリック医薬品の上市以降にオーソライズド・ジェネリック医薬品またはジェネリック医薬品に切り替えた患者を同定した。これらの患者を追跡し、先発医薬品への再切り替え状況を評価した。 Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、暦年で調整したハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推算した。逆分散法によるメタ解析を行い、全医薬品の補正後HRを統合した。オーソライズド・ジェネリック医薬品は再切り替え発生率が28%低下 サケカルシトニン点鼻スプレーについてはサンプルサイズが不十分であったため、再切り替えの解析からは除外した。先発医薬品から、9万4,909例がオーソライズド・ジェネリック医薬品に、11万6,017例がジェネリック医薬品に切り替えていた。 再切り替えの補正前発生率は、医薬品によってばらつきがみられ、100人年当たりアレンドロン酸錠の3.8から、アムロジピン/ベナゼプリル・カプセルの17.8までの幅が認められた。全医薬品における再切り替え発生率は100人年当たり8.2(発生の率比:0.83、95%CI:0.80~0.87)だった。 プライマリ・コホートにおける補正後再切り替え発生率は、先発医薬品からオーソライズド・ジェネリック医薬品に切り替えた患者が、ジェネリック医薬品への切り替え例に比べ28%低かった(統合HR:0.72、95%CI:0.64~0.81)。再現コホートでも、ほぼ同様の結果が観察された(0.75、0.62~0.91)。 著者は、「先発医薬品への逆戻りを防ぐには、患者-医療者間のコミュニケーションを改善する介入を行って、質、安全性、有効性に関する先発医薬品とジェネリック医薬品の同等性の認知度を上げることが、きわめて重要と考えられる」とし、「先発医薬品とジェネリック医薬品の外観を一致させることも、先発医薬品への逆戻りを防ぐ手立てとなる可能性がある」と指摘している。

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扱っている題材は大変真面目なものであるが(解説:野間 重孝 氏)-726

 多くの先進国においては、ガイドライン上に今でも記載はされているものの、実臨床の場で急性心筋梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法は、何らかの理由で救急センターへの搬送が容易でないような例外例を除いては、すでに行われなくなっているといってよいと思われる。しかしながら一方で、医療資源の乏しい環境下での機械的再灌流の代替え療法として、発展途上国などではいまだに重要な役割を担っていることも事実であるといえる。 本研究は上記のような事情に鑑み、タイのUbon Ratchathani大学のPeerawat Jinatongthai氏を中心とするグループが、現在使用可能ないくつかの血栓溶解剤とその使用法について、約13万例を含む計40試験をネットワークメタ解析し、報告したものである。この結果については9月1日のケアネット上に大変分かりやすい訳文が掲載されているので参照されたい。確かに各血栓溶解剤、付加的薬剤の用法・効能についてシステマティックな知見が得られないままになっていたことは事実であり、その意味でこの研究は貴重な情報を提供したものであるといえよう。 このように評者は本論文に対して一定程度の評価をするものではあるが、また一方で本論文が世界の先端的な研究が掲載されるべきLancet誌上に掲載されるべき性格のものであるかどうかについてはいささか疑問を感じるものの1人である。多くの国において経皮的血栓溶解療法はすでに過去の治療法となっており、また一方、発展途上国では一定以上の役割を果たしているとはいえ、その薬価と各国の医療保険制度の整備との関係を考えるとき、治療法に関する知見は知見として、本当に多くの庶民に福音をもたらしているものかどうかについては疑問を持たざるをえない。 以下は反論があることを承知で書かせていただくのであるが、最近一部の研究者たちの間で、とにかく多くの症例を集め、先端的な統計手法で処理をすれば、内容の重要性の軽重にかかわらず有名雑誌に掲載される傾向があるのではないか、という趨向が懸念されている。またもう一歩踏み込んで、各雑誌がimpact factor争いのため、相互に引用されやすい論文を意図的に掲載しているのではないかと訝る声が聞こえてくることも気になる。本論文は扱っている内容は規模が大きいとはいえないが真面目なものであり、人道的な観点からも非難されにくい題目となっている。したがって表だって意見するところは何もないのであるが、何か微妙なものを感じてしまうのは、評者の邪推だろうか。

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脳室内出血の血腫洗浄、アルテプラーゼ vs.生理食塩水で機能改善に有意差なし(解説:中川原 譲二 氏)-642

 米国・ジョンズ・ホプキンス大学のDaniel F Hanley氏らが、世界73施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験CLEAR III(Clot Lysis:Evaluating Accelerated Resolution of Intraventricular Hemorrhage Phase III)の結果を報告し、脳室内出血に対して、脳室ドレーンを介した血栓溶解剤:アルテプラーゼによる血腫洗浄を行っても、生理食塩水での洗浄と比較して有意な機能改善は認められなかったとした。 脳室内出血は、死亡と生存者の重度障害が50%を超えると報告されているが、これまでメタ解析などで血腫の除去が閉塞性水頭症の軽減や神経毒性の減少をもたらし、生存率や機能転帰を改善することが示唆されていた。今回のCLEAR III試験の目的は、脳室ドレーンを介したアルテプラーゼと、生理食塩水による脳室内出血の洗浄除去のどちらが患者の機能アウトカムを改善するかを確認することであった。 CLEAR III試験では、出血量が30mL未満の非外傷性脳出血患者で、集中治療室にて状態が安定しており、脳室内出血により第3または第4脳室が閉塞し脳室ドレーンを留置した患者を対象に行われた。被験者を、アルテプラーゼ群(脳室ドレーンを介して8時間間隔でアルテプラーゼ1mgを最大12回注入)、またはプラセボ群(0.9%生理食塩水を同様に注入)に1対1の割合で無作為に割り付け、投与期間中24時間ごとにCTを撮影した。 500例を対象として、180日後のmRS:3点以下を機能良好として比較 主要有効性アウトカムは、良好な機能アウトカム(180日後のmRSが3点以下)とした。2009年9月18日~2015年1月13日の間に500例が無作為化され、アルテプラーゼ群で249例中246例、プラセボ群で251例中245例が解析対象となった。良好な機能アウトカムを示した患者の割合は、両群で同程度であった(アルテプラーゼ群48% vs.プラセボ群45%、リスク比[RR]:1.06、95%CI:0.88~1.28、p=0.554)。脳室内出血量と視床出血で補正後の両群差は3.5%で有意差はなかった(RR:1.08、95%CI:0.90~1.29、p=0.420)。180日後の致死率は、アルテプラーゼ群で有意に低かった(18% vs.29%、ハザード比:0.60、95%CI:0.41~0.86、p=0.006)が、mRS 5点(寝たきりなどの重度障害)の割合が有意に多かった(17% vs.9%、RR:1.99、95%CI:1.22~3.26、p=0.007)。脳室炎(7% vs.12%、RR:0.55、95%CI:0.31~0.97、p=0.048)や重篤な有害事象(46% vs.60%、RR:0.76、95%CI:0.64~0.90、p=0.002)は、アルテプラーゼ群で低かったが、症候性出血の割合は同程度であった(2% vs.2%、RR:1.21、95%CI:0.37~3.91、p=0.771)。 脳室内出血で通常の脳室ドレーンで管理される患者では、アルテプラーゼ洗浄は、mRS3点をカットオフとする機能アウトカムを大幅には改善しない。脳室ドレーンに使用されるアルテプラーゼは安全と思われるので、今後は、アルテプラーゼによる完全な脳室内血腫の除去の頻度を上げることが機能回復をもたらすかどうか、を検討する必要があるとまとめている。(Lancet誌オンライン版2017年1月9日号掲載の報告。) CLEAR III試験のパイロット試験として位置付けられたCLEAR-IVH試験では、アルテプラーゼ洗浄の有効性が示されたが、CLEAR III試験では、その効果は限定的であった。著者らは、現在のアルテプラーゼ洗浄による脳室内血腫の除去は不十分であると評価しており、将来の研究では、有効な脳室内血腫の除去がより高頻度でより迅速に行われるために脳室内カテーテルの外科的留置法の改良が必要であるとしている。わが国の脳卒中治療ガイドライン2015では、(1)脳室内出血に関して、血腫除去を目的とする血栓溶解薬の投与は考慮しても良い(グレードC1)、(2)脳室内出血の外科治療に関しては、神経内視鏡手術や定位的血腫除去を考慮しても良い(グレードC1)とされているが、その有効性に関する国内での検証が必要である。

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PDE4阻害薬軟膏、小児・成人のアトピー性皮膚炎に有用

 アトピー性皮膚炎に対し、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のcrisaborole軟膏は、有効性のすべての評価項目を改善し良好な安全性プロファイルを示したことが報告された。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らが行った、アトピー性皮膚炎の小児と成人を対象に行った第III相の2試験において示された。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版7月7日号の掲載報告。 研究グループは、crisaborole軟膏の有効性および安全性を評価する2件の第III相試験(AD-301試験[NCT02118766]、AD-302試験[NCT02118792])を実施した。 2試験とも試験デザインは同じで、軟膏基剤を対照とした二重盲検試験。医師による全般重症度評価(Investigator's Static Global Assessment:ISGA)で軽症~中等症のアトピー性皮膚炎と診断された2歳以上の小児および成人患者を、crisaborole群と軟膏基剤塗布群に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ1日2回、28日間塗布した。 主要評価項目は、29日目のISGAスコア改善(症状消失[0]/ほぼ消失[1]、かつベースラインからのスコアが2グレード以上改善)であった。また、ISGAスコア改善までの期間、症状消失/ほぼ消失の患者の割合、アトピー性皮膚炎症状の重症度の低下、およびそう痒の改善までの期間についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・2試験ともに、ISGAスコア改善を達成した患者の割合は、crisaborole群が軟膏基剤群より高かった。AD-301試験(32.8% vs.25.4%、p=0.038)、AD-302試験(31.4% vs.18.0%、p<0.001)。・同様に症状消失/ほぼ消失の患者の割合も、crisaborole群が高かった。AD-301試験(51.7% vs.40.6%、p=0.005)、AD-302試験(48.5% vs.29.7%、p<0.001)。・crisaborole群では、軟膏基剤群よりISGAスコアの改善ならびにそう痒の改善が、より早期に達成された。・治療関連有害事象はまれで、有害事象の重症度は軽度~中等度であった。・なお結果は、試験期間が短く、限定的である。

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爪真菌症に有用なホウ素含有の新規抗真菌薬

 爪真菌症は生活の質に影響を与える。ホウ素を含有する新しいクラスの抗真菌薬タバボロール(tavaborole、国内未承認)は、足の爪真菌症に対して優れた臨床効果を発揮するとともに安全性プロファイルは良好であることが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のBoni E. Elewski氏らによる2件の第III相試験の結果、確認された。タバボロールは爪真菌症に対する新たな治療選択肢として期待される。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2015年5月5日号の掲載報告。 第1趾爪(対象爪)の20~60%が感染している遠位爪甲下爪真菌症の成人患者を、タバボロール群または基剤群に2対1で無作為に割り付け、1日1回48週間投与した。  主要評価項目は、52週目の完全治癒率(完全に透明な爪かつ真菌学的治癒の割合)であった。副次的評価項目は、完全またはほぼ完全に透明な爪を有する患者の割合、真菌学的治癒率、完全またはほぼ完全な治癒率(完全にまたはほぼ完全に透明な爪かつ真菌学的治癒の割合)、および安全性であった。 主な結果は以下のとおり。・完全治癒率(タバボロール群/試験1:6.5%、試験2:9.1% vs. 基剤群/それぞれ0.5%、1.5%)および真菌学的治癒率(同様に31.1%、35.9% vs. 7.2%、12.2%)は、タバボロール群が基剤群より有意に優れていた(p<0.001)。・完全またはほぼ透明な爪を有する患者の割合も、タバボロール群が基剤群より有意に高かった(26.1%、27.5% vs. 9.3%、14.6%:p<0.001)。・完全またはほぼ完全な治癒率も、タバボロール群が基剤群より有意に高率であった(15.3%、17.9% vs. 1.5%、3.9%:p<0.001)。・タバボロールの適用部位にみられた主な有害事象は、皮膚剥脱(2.7%)、紅斑(1.6%)および皮膚炎(1.3%)であった。

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日本初“外用”爪白癬治療剤の特徴と有用性

 2014年9月2日(火)、爪白癬治療剤エフィナコナゾール(商品名:クレナフィン爪外用液10%)が発売された。本剤は、日本初の外用爪白癬治療剤で、科研製薬が創製した新規トリアゾール系化合物エフィナコナゾールを有効成分とする。 本剤の発売によって治療選択肢が増えた爪白癬治療。その現状および課題、新薬への期待について紹介する。爪白癬とは 爪白癬とは、皮膚糸状菌(白癬菌)が爪および爪の下の皮膚(爪床)に入って生じた感染症で、日本の有病者は1,100万人ともいわれている。 爪白癬はかゆみなどの症状はなく、主に爪の混濁、肥厚、変形などの外見上の変化を来す。病態が進行すると、肥厚した爪が靴で押さえられて痛くなったり、歩きづらくなったりすることもある。 また、身体の他部位や家族などへ感染が広がることもあるので、速やかに治療する必要がある。これまでの爪白癬治療と課題 これまで、日本国内で爪白癬に適応のある治療薬は、経口抗真菌薬のみであった。経口抗真菌薬のメリットとして、血流に乗って爪床で抗真菌作用を示すこと、他部位の白癬菌感染にも効果が期待できるといったことが挙げられる。 しかし、肝障害などの副作用や他剤との薬物相互作用が生じることがあるため、高齢者や合併症によって複数の薬剤を服用している患者さんでは、注意が必要となる。 経口抗真菌薬を服用できない場合は、適応外とはなるが、爪を削ったうえで外用抗真菌薬が塗布されることもあった。これまでの外用抗真菌薬は、爪床まで浸透しにくく、爪白癬には効果が期待できないためである。爪床まで浸透する外用抗真菌剤特徴 エフィナコナゾールは、エルゴステロールの生合成を阻害することで、抗真菌活性を発揮する。ケラチン親和性が低いため、爪の表面に塗るだけで爪床まで浸透し、爪白癬に効果が期待できる薬剤である。 なお、処方の際は、直接鏡検または培養などにより確定診断を行い、他疾患と鑑別する必要がある。有効性 日本人を含む国際共同第III相試験および海外第III相試験で、感染面積が20~50%(中等度)の爪白癬患者を対象とし、基剤群との二重盲検比較を行った。 エフィナコナゾールまたは基剤を48週間投与し、投与開始後52週目の完全治癒率、真菌学的治癒率、臨床的有効率などを評価した。その結果、エフィナコナゾール群は基剤群に比べて、有意な差が認められた。 なお、52週目の真菌学的治癒率(KOH直接鏡検と真菌培養検査がともに陰性の割合)は55.2%であった。安全性 上記の2試験における臨床検査値異常を含む副作用発現は、安全性評価対象例1,227例中78例(6.4%)であった。頻度の高いものは皮膚炎、水疱、紅斑、そう痒などで、主に適用部位にみられた。 血中移行性は低いため、経口抗真菌薬で問題となる全身性の副作用や薬物相互作用を回避できるという点でも期待が高い。使用方法 1日1回、罹患爪全体に塗布する。爪がひどく濡れている状態での塗布は避け、清潔な状態での塗布が望ましい。 爪の表面全体および皮膚との境界部まで塗布するが、皮膚に付着すると刺激を感じることがあるため、周囲の皮膚に付着した薬剤は拭き取る。完全に治癒するまで継続使用が大切 本剤は、爪の白癬菌に作用するもので、すでに変化した爪の外観を改善するものではない。爪が生え変わるまでは白癬菌が爪の中に残っていることもあるため、健康な爪に生え変わるまで継続して治療を続ける必要がある。 完全に治癒する前に自己判断で中断すると、再発・悪化、他部位や他者へ感染するおそれがある。また、すでに家族が罹患している場合は、白癬菌の移し合いにならないように全員で治癒を目指したい。早期治療、継続治療のために 最後に、クレナフィン爪外用液について、科研製薬株式会社の製品担当者に話を聞いた。「これまで、日本では外用の爪白癬治療剤はなく、経口抗真菌薬ではカバーしきれない症例も多くみられた。本剤の登場により、より安全・簡便に有効性が期待できるため、新たな選択肢として先生方や患者さんのお役に立てるのではないかと考えている」としたうえで、「爪白癬の症状は外見の変化が主で、痛みやかゆみが少ないので、病気と認識していない患者さんも少なくない。早期治療、継続治療の必要性を説明するため、情報を提供していきたい」と語った。 新たな治療選択肢であるクレナフィン爪外用液によって、患者さんのQOLおよび全身性副作用や薬物相互作用への懸念が少ない爪白癬治療の実現につながるものと考えられる。また、外用剤という利便性から良好なアドヒアランスが見込まれ、治療の継続につながることが期待される。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第12回

第12回:胆石のマネージメント~無症状の対応から、胆石発作や急性胆嚢炎を起こした場合の対処まで~監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 胆石は、腹部エコーを行ったら偶然見つかった、ということが日常診療では多いと思います。日本でも剖検による胆石保有率が2.4%1) と決して少なくありません。ここで、無症状の胆石への対応、胆石発作や急性胆嚢炎を起こした場合の対処を復習したいと思います。 以下、American Family Physician 2014年5月15日号2) より1.はじめに胆石は、消化器疾患の中でも最も多い疾患の1つである。胆石のリスクとして、糖尿病、肥満、女性、ホルモン製剤、避妊薬の内服がある。ほとんどの患者では無症状に経過し、超音波検査などで偶然見つかることが多い。偶然見つかった胆石患者のほとんどは、今後症状が出現する可能性は少ないが、一度症状が起きると胆石発作が繰り返される。2.症状、徴候胆石発作は、右上腹部の急性の疼痛として表現される。変動なく突然発症し、1時間でピークを迎える。90%が10年以内に再発をする。急性胆嚢炎の身体所見は何と言ってもMurphy sign(右季肋部を押さえると吸気時に痛くて呼吸が止まる)が重要である。3.診断腹部エコーがまず勧められる。胆石の診断において 感度が98%、特異度が95%である。MRCPは、エコーで描出できなかった場合に次に推奨される。胆石がある患者の6~12%に胆管結石があり、それらは膵炎や胆管炎のリスクになるので注意が必要である。MRCPとERCPは同等の診断精度を持つ。ただし、ERCPのほうが侵襲的で出血、膵炎、胆管炎が4~10%で生じる。4.治療胆石溶解剤の内服は、無症状の胆石に対する疼痛予防としては効果がない。手術の有無については、通常の無症状の胆石は経過観察をするが、例外として磁器様胆嚢(胆嚢がんのリスクあり)、溶血性貧血、3cm以上の胆石では手術を考慮する。胆石発作および胆嚢炎で手術を選択した場合は、ほとんどの症例で腹腔鏡下胆嚢摘出術が薦められる。ただし、経過観察も1つの選択肢となりうる。ある研究によると症状のある胆石に対しては35%に手術が必要で、平均5.6年手術を延長することができたとする報告がある。腹腔鏡下から開腹術に移行する可能性は、非炎症性であれば2~15%、胆嚢炎であると6~35%である3) 。待機的に行われた胆嚢摘出術であれば、予防的な抗菌薬の投与は不要である。ただし、ハイリスク(60歳以上、糖尿病を抱えるなど)であれば、予防投与により感染のリスクを軽減できるかもしれない。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 山口和哉ほか. 日臨外医会誌 1997; 58): 1986-1992. 2) Abraham S, et al. Am Fam Physician. 2014;89:795-802. 3) Sherwinter DA, et al. Laparoscopic cholecystectomy. Medscape.

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加算導入後1年超、半数以上の医師は現在も”一般名処方”を行っていない

2012年4月に新設された“一般名処方加算”。導入後1年以上が経過した今、実施率はどんな状況なのでしょうか?行わない先生、その理由は?「一般名は長い!覚えられない!書けない!」「後発品の銘柄をいちいち覚えられない、いっそ全て一般名で」といった“名前問題“から、「成分が同じでも効果はどうなの?」「どの製品が出されるのかわからないのに責任持てないよ」などの“後発品って…問題”まで、一般名処方をめぐるあれこれを伺ってみました!コメントはこちら結果概要昨年より比率は高まったものの、半数以上の医師は現在も一般名処方を行っていない一般名処方の実施有無について前回調査(2012年6月)と同様に尋ねたところ、『行っている』との回答が17.4%(前回15.1%)、『一部行っている』が25.4%(同19.3%)であり、何らかの形で行っている医師は全体で42.8%(同34.4%)。診療報酬改定前後で17.2%→34.4%と倍増した前回結果と比較すると実施率はゆるやかな伸びに留まった。『行っていない』とした医師を施設別に見ると、診療所・クリニックでは39.4%、一般病院では62.9%、大学病院では71.4%に上った。(回答医師単位の集計であり、処方箋枚数および金額は加味していません)行っていない医師、最大の理由は「一般名を調べるのが手間」。煩雑さに加え、処方ミスを不安視『行っていない』とした医師に理由を尋ねると、『一般名を調べる手間がかかるため』で42.1%、『電子カルテに一般名処方のサポート機能がなく煩雑』29.7%、『紙カルテで煩雑』10.1%と、一般名の長さ・複雑さによる処方(事務作業含む)の手間を挙げた回答が多く見られた。その点に関連して『処方ミスを起こす不安がある』も24.0%に上り、「一般名は"うろ覚え"が現実。いつでも・どこでも事故が起こる可能性がある」「専門外では覚える余裕はない」などのコメントが寄せられた。「後発品の効果・供給体制に懸念」、「処方はするがどれでも良いわけではない」後発品に対して懸念点がある医師からは『後発品の効果に疑問があるため』24.0%、『供給体制に不安があるため』8.2%といった回答が挙がった。その他『後発品も銘柄指定で処方するため』21.0%との意見があり、「後発品にも良いものや粗悪なもの、作用の強いもの弱いもの様々で、成分では怖くて(処方箋を)書けない」といったコメントが寄せられるなど、既に後発品を処方している医師にとっても、製品を指定できない一般名処方へのハードルは高いことが明らかとなった。設問詳細一般名処方についてお尋ねします。2012年4月の診療報酬改定で“一般名処方加算”が新設されるなど、医療費削減策の一環として、後発医薬品の使用促進策がさまざまな形で検討・実施されています。厚労省は今年4月5日、「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を公表。普及に関する目標値の算出方法をこれまでの“全ての医療用医薬品に占める後発品のシェア”から“後発品に置き換え可能な医薬品(長期収載品と後発品を含める)に占める後発品のシェア”に変更し、2018年3月末までにシェア60%(現在約45%)を達成するという数値目標を掲げました。そこで先生にお尋ねします。Q1.先生は一般名処方を行っていますか?行っている一部行っている行っていないQ2.Q1で「行っていない」と回答した先生にお尋ねします。一般名処方を行わない理由として当てはまるものを全てお選びください。(複数回答可)後発品に関しても銘柄指定で処方するため後発品の効果に疑問があるため後発品の供給体制に不安があるため後発品を患者が嫌がるため慣れた薬が変更となるのを患者が嫌がるため一般名を調べる手間がかかるため処方ミスを起こす不安があるため紙カルテで処方が煩雑なため電子カルテだが一般名処方のサポート機能がなく煩雑なため院内処方のためその他Q3.コメントをお願いします。2013年6月6日(木)~7日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「専門外領域の一般名処方は、調べることが多く面倒だ。」(一般病院,内科,60代)「後発薬には、明らかに効果に疑問符のつくものがある。思いもかけない副作用が出ることもあり、 後発薬なら何でもOKというわけにはいかないのが実情。一般名とする場合、慣れるまで相当に処方に余計な時間を要し、診療にも支障が出る。事務・薬局の混乱も避けられない。何が何でも後発薬に・・という風潮はいただけない。」(診療所・クリニック,内科,40代)「間違いのない処方をおこなうためには、慣れた、性質、データの良くわかった先発品が優先になります。後発品はやはりばらつきがあり、副作用データもよくわからず使いにくいです。」(診療所・クリニック,内科,40代)「ジェネリックの場合はジェネリック可としてその薬剤名を書いています」(診療所・クリニック,耳鼻咽喉科,50代)「まだコンピューターのシステムが対応していないので難しい。個人的には一般名でかまわないが・・・」(診療所・クリニック,精神科,40代)「一般名処方が基本だと思う。同じ薬剤で異なる商品名を覚えること、同じ薬剤で違った名前があることは安全管理の面から好ましくない。しかし、当院では一般名処方がサポートされておらず残念」(大学病院,麻酔科,60代)「一般名が多すぎて、他院で処方されている薬の手帳を 見せてもらっても、何の薬か分からない。調べる手間がかかり迷惑以外のなにものでもない。いかにも現場のわかっていない役人が考えた事だというのがよくわかります」(診療所・クリニック,皮膚科,70代以上)「一般名で処方することは医師の義務と考えており、厚労省の方針は妥当と思う。」(一般病院,消化器内科,50代)「一般名にすると、胃腸薬など処方ごとに薬が変わり患者に不信感を与えたことがある。効果に私自身も疑問がある。」(一般病院,小児科,60代)「後発品のエビデンスがはっきりしないのにそっちへ強引に切り替えさせようとする厚労省の方針には呆れます」(診療所・クリニック,循環器内科,40代)「専門領域では商品名と一般名の両方を憶えられますが、専門外ではそんな余裕はありません」(一般病院,糖尿病・代謝・内分泌内科,30代以下)「ただでさえ忙しい中、いちいち一般名を調べていたら堪りません」(診療所・クリニック,内科,70代以上)「一般名で処方しても薬局から先発品が出ることもある。意味がないような気がする」(診療所・クリニック,皮膚科,50代)「後発品も先発品と同じPK/PDの試験が義務付けられ、同等と判断できれば積極的に使います。最大の欠陥はこれが行われていないこと。試薬ではないので、同一成分同一効果ではない。有効成分に添加剤や賦形剤などを加えている。例えるなら、同じ材料で料理を作っても、味も栄養の吸収も料理人の腕で変わるということと同じ」(一般病院,呼吸器内科,40代)「商品名で入力して、自動的に一般名になるようなシステムがあれば一番良いのでは」(診療所・クリニック,呼吸器内科,40代)「後発薬の名前が長すぎて処方箋に記載するのが大変。(当院は手書きのため)また、覚えていないものもある」(一般病院,泌尿器科,30代以下)「当初は行っていたが、薬局が患者さんの希望を聞かず処方し、大混乱になり中止した。また、処方した薬をきちんと報告する薬局としない薬局まちまちで カルテがメチャメチャになってしまった」(診療所・クリニック,心療内科,50代)「後発品の臨床成績を、先発品から独立して示してほしい」(診療所・クリニック,内科,50代)「一般名のほうが判りやすいし、迷わない」(一般病院,麻酔科,50代)「後発品にも良いもの、粗悪なものと様々で、mgをそろえても作用の強いものや弱いものもある。処方に関して責任を医師に求めるならば成分では怖くて書けない。副作用が出てから動いても遅い。チェックは厚労省主導でないと何も始まらないので粗悪なジェネリックを締め出してほしい」(診療所・クリニック,内科,50代)「先発品は純度99.5~99.9%に対して、後発品の純度は98%前後です。不純物の比較だと、4~20倍 の差があります。私自身も、ある日突然、病院の方針で抗生剤が後発品に変わっていて、心肺停止を起こした症例を経験しています。余程患者が望まない限り、後発品は使用しません」(診療所・クリニック,糖尿病・代謝・内分泌内科,50代)「後発薬の名前が、他の成分の先発品などと似ていた為 誤処方、誤薬が起きかけたことが何度かある。後発品の商品名はリスク要因である」(診療所・クリニック,内科,40代)「電子カルテに一般名処方の機能がなくできません」(大学病院,呼吸器内科,50代)「レセコン(電カル)なので、設定すればストレスなし」(診療所・クリニック,内科,60代)「ジェネリックを積極的に採用、使用している」(大学病院,泌尿器科,40代)「医師免許を取得した20年以上前には今ほど後発品は無く、当時の厚生省としても、一般名処方に関しては何の方針も有していなかったと思うが、先発品の一部は複数社から異なる薬品名で販売されており、『同一成分なのに複数の製品名を知っておかねばならない」ことに煩わしさを感じていたので、当時から『処方は一般名で良い」と思っていた。その考えは今も変わらないが、後発品の中には薬効が不確かな製品もあり、流通する製品の効果・副作用や安全性に対する保証が不十分なまま、医療費削減を動機に政策を推進しようとする厚労省の姿勢はいただけない。」(一般病院,整形外科,50代)「後発品の選択については患者が望むならそうすべき。効果の同等性については一般医が結論づけることは困難。厚労省が推進するかぎり、齟齬が生じた場合には厚労省が責任をとるのだろう」(一般病院,麻酔科,50代)「後発品はメーカーにより品質がまちまちで、全く先発品に劣ってしまっているものも多い。でも薬局は後発品比率を上げるために必死で質の良くない後発品を勧めてしまっている。患者が迷惑だと思う」(診療所・クリニック,内科,40代)「一般名処方は考え方としては妥当であろうが、医療現場で実際に対応するには甚だしく準備不足であると考えます。実務上、最大の障害は電子カルテの対応が追いつかないことにありますが、そもそも後発薬一般について、基剤成分が先発薬と違うのか否か等の情報が不十分であると感じてもいます」(診療所・クリニック,放射線科,40代)「薬局でジェネリックに変更された際にこちらに届く、処方変更の書類の束の処理が困る」(大学病院,血液内科,50代)「やらなければいけないのか、やらなくても良いのか、中途半端な方針が多すぎる。監督省庁として適切な方針を責任を持って立てて頂きたい。明確に出されないと、システム更新のための予算手配もできない」(大学病院,その他,40代)「一般名処方をしても院外薬局に先発薬を出されるケースが多く困っています」(診療所・クリニック,内科,40代)「医師も混乱するが、看護師はほとんど一般名を知らないので全銘柄覚えられるとは思えない。外来時は先発品を、入院後は後発品を投与していた患者がいたが、同一成分薬とは知らず重複投与していたということに。」(一般病院,泌尿器科,50代)「成分が同じだけで、効果は明らかに違うように実感している。目先の安さに飛びつき、効果不十分であれば結局医療費は長期的には増大するし、また先発の製薬会社を窮地に追いやることで新薬の開発が鈍ると危惧している。ジェネリックが素晴らしいように煽るCMなど、やめてほしい」(大学病院,精神科,30代以下)「電子カルテで、商品名を入力すれば、一般名に変換できるシステムがあれば、先発品・後発品にはこだわらない。手書き処方箋の場合は厳しい」(一般病院,精神科,40代)「一時期混乱致しましたが、現在ではもう慣れました」(一般病院,整形外科,40代)「商品名:エコリシン点眼液 一般名:エリスロマイシンラクトビオン酸塩・コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム点眼液。こんな長い薬名、処方箋に書けるわけがない」(診療所・クリニック,皮膚科,60代)「抗アレルギー薬の後発品にアレルギーを起こした症例を見ました。他の薬に対するアレルギーならまだしも、抗アレルギーに対するアレルギーは少し後発品の怖さを感じます」(一般病院,呼吸器内科,30代以下)「後発品を使うことで後発品の品質向上がもたらされることはいいことです。先発メーカーの利益が損なわれることによる創薬へのマイナス面が気になります」(診療所・クリニック,小児科,50代)「後でどこの会社の薬を処方したか確認しないといけないから大変!」(診療所・クリニック,消化器内科,40代)「厚労省がジェネリックや一般名処方を強力に推進する意図は、唯一「医療費の削減」ですが、それによって果たして医療費の削減がなされているかのしっかりしたデータはあるのでしょうか?その処方をする事により、病状がかえって改善するのに時間が掛かり服薬期間が長くなったり、本来なされない検査が追加される事になったり、本来の効能が十分発揮されなかったりした事例が数多く臨床現場で発生しているのを聞きますし、それで来院した症例も数多く経験しています」(診療所・クリニック,循環器内科,60代)「医療費が0割の方には、後発薬がある薬剤に関してはその使用を義務化して頂きたい」(大学病院,神経内科,30代以下)「レセコンの性能の問題かもしれませんが、一般名処方も覚えなくてはならないのが困ります。後でカルテを見る時に、この薬は何の薬?と思ってしまう事が多々あり、いずれ医療事故を招きかねない感じがします」(診療所・クリニック,内科,50代)「どんな後発品でも良いから変更させて医療費削減しか考えない厚労省、突然『その薬剤はうちでは生産中止になりました』という製薬会社、自分に都合の良いように処方を変える調剤薬局。病院(医師)側だけが面倒な一般名処方をする必要はない」(一般病院,内科,50代)「処方箋に一般名を書くのは、調べるのと書くのに手間がかかる。また覚えにくいので歓迎できない。仕方なく実施している」(診療所・クリニック,内科,60代)「推進したいのであれば『自己負担のない方は、原則的に後発品処方』くらいの姿勢が必要と思います」(一般病院,循環器内科,30代以下)「一般名の管理番号(厚労省のコード)が振り当てられていないものが多く、一般名処方が適宜、状況に応じてになってしまっている」(診療所・クリニック,耳鼻咽喉科,50代)「門前薬局と事前に打ち合わせて、一般名だが先発品を使うもの、後発品でも構わないものを分けている。何が出されているか分からないのは避けるようにしている。降圧剤等循環器系の薬は出来るだけ先発を使っているが、痛み止め、胃薬などはゾロでも構わないかもと考えている」(診療所・クリニック,腎臓内科,40代)「後発品は多くの会社が生産しているが、調剤薬局では一般名だとどこの会社が選ばれているのかが分からない。後発品の一般名がまだ手書き処方をしているため、一診察に時間がかかっている」(診療所・クリニック,内科,40代)「長い名前を書くのが大変なので最初の4文字だけにして欲しい。錠とかの材形は省略可にして欲しい。余計な手間がかかって診療に集中できない」(一般病院,整形外科,40代)「合剤やらいろいろ出ている中、一般名で全て済ませるのは無理がある」(大学病院,膠原病・リウマチ科,40代)「医療費抑制のため後発品を推進するのは仕方ないとしても、生活保護受給者が『どうせお金がかからないから先発品で』と言ったり、生活保護こそ後発品にすべきだという意見に『差別するのか』と言うのはけしからんと思う。厚労省は強い態度で臨んでほしい」(一般病院,外科,50代)「後発品は使用したくないが、点数のためにしています。やむをえず・・・」(診療所・クリニック,皮膚科,30代以下)「後発品使用についてはやむをえないと思うが、ころころ政策を変えすぎで混乱しやすい」(診療所・クリニック,整形外科,40代)「厚労省の方針や後発薬について思うこと 1)抗痙攣薬では、先発品と後発品の間で明らかに効果に差があります。2)医師のみならず、レセコン入力の事務職員、薬局のレベルでも仕事が煩雑となり、ミスが起きやすくなります。3)医療費の削減に際しては、根幹の、終末期医療をどうするのか、先端医療の費用は、国民皆保険制度はどうするのかを議論せず、後発薬の普及は枝葉末節の話だと思っています」(診療所・クリニック,小児科,50代)「このたびの一般名処方加算は、なんとも下らないものである。後発品への移行を促すならば、もっと抜本的なインセンティブを考えるべきである」(診療所・クリニック,糖尿病・代謝・内分泌内科,40代)「後発品の名称は、先発品名の後ろに後発品であることがわかる記号や製造会社名を付加する形式にすれば良かったのです。なぜこんなに単純なことが素直にできなかったのか。また後発品メーカーには、医薬品費低減目的のためにも広告は一切禁止すべき」(一般病院,内科,50代)「すべて一般名処方とするのがふさわしいと思う」(一般病院,精神科,30代以下)「院内で先発薬を処方するのと、処方箋を出し後発薬を薬局で処方してもらうのとでは、患者からみたトータルコストはほぼ変わらない。こんな薬局寄りの保険点数配分はおかしい」(診療所・クリニック,内科,40代)「ほとんどの医師は一般名は"うる覚え"が現実です。いつでも・どこでも事故が起こる可能性があります、が、事故が起こっても厚労省は隠す(積極的な公表はしない)でしょうが…」(一般病院,小児科,30代以下)「今後発売する後発品はいわゆる商品名はつけず、すべて一般名での発売としてもらいたい。先発品ならいざ知らず、売れなければいつ撤退し手に入らなくなるかも知れない後発品にまで商品名がつけられ、それをその都度覚え直すという全く価値のない作業にこれまでどれほどの労力を割いたことか」(一般病院,整形外科,50代)「①後発品使用を推進するのは、財政上もっともかと思います。一部の循環器系薬などは、後発品が先発品と同等の効果を持っていないようですが、私が関係する領域では概ね『後発品で効かなくなった』『効き方が先発品と違う』等のクレームは経験していません。②そもそも日本では先発品の薬価が高すぎるのが問題。日本の薬剤費の高さは異常です」(一般病院,精神科,50代)「医療費削減のために後発品を推奨するなら、先発品の特許が切れたのち先発品の値段を後発品並みに下げればよいと思う」(一般病院,消化器内科,60代)「後発薬の有無が分かりにくいときがある」(一般病院,呼吸器内科,40代)「後発品の中にはいまだ品質などが安定しないものも多く、基本的には先発品の使用を行いたいが、受けてくれている薬局などに対し後発品の使用割合による支払額の差などがつくため『やむを得ず』一般名処方を行っているのが本心である」(診療所・クリニック,小児科,50代)「しくみをよくわからず、電子カルテのなすがままに任せています。今のところ、トラブルはないようですが・・・」(大学病院,産婦人科,30代以下)「先発品と後発品の保険適応を一致させるべき」(一般病院,内科,40代)

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静脈性下腿潰瘍、新規のスプレー式細胞療法が有効

 静脈性下腿潰瘍の治療として、新たに開発されたスプレー式の細胞療法(HP802-247)が有効なことが、米国・マイアミ大学Leonard M Miller医学校のRobert S Kirsner氏らの検討で示された。静脈性下腿潰瘍患者の多くは現在の標準治療では治癒しないという。HP802-247は、増殖を停止させた同種新生児角化細胞と線維芽細胞を含むスプレー薬で、静脈性下腿潰瘍の新たな細胞療法として開発が進められている。Lancet誌2012年9月15日号(オンライン版2012年8月3日号)掲載の報告。5群を比較するプラセボ対照無作為化第II相試験研究グループは、慢性静脈性下腿潰瘍に対するHP802-247の有効性と安全性を評価するために、種々の細胞濃度と投与期間を設定した多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験を実施した。2009年6月15日~2011年5月5日までに、米国とカナダの28施設から1~3ヵ所の潰瘍(部位:膝~足首、大きさ:2~12cm2[腱、筋肉、骨には及んでいない]、罹患期間:6~104週)を有し、ドップラー超音波検査で静脈逆流が確認され、動脈流は正常な18歳以上の成人外来患者が登録された。これらの患者が、HP802-247を5.0×106細胞/mL(7日ごと)、同(14日ごと)、0.5×106細胞/mL(7日ごと)、同(14日ごと)を投与する群または賦形剤投与群(プラセボ群)に無作為に割り付けられた。5つの群のすべての患者に4層圧迫包帯が適用され、毎週1回の外来受診時に取り替えられた。試験資金提供者(Healthpoint Biotherapeutics社)、試験監視者、統計学者、担当医、参加施設職員、患者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は12週における創傷範囲の平均変化率とし、初回治療前に試験とは無関係の原因で死亡した1例を除いてintention-to-treat解析を行った。0.5×106細胞/mLの14日ごとの投与で12週後に創傷が約16%縮小228例が登録され、5.0(/7日)群に45例(平均年齢61.8歳、男性56%)、5.0(/14日)群に44例(同:59.8歳、50%)、0.5(/7日)群に43例(同:62.6歳、67%)、0.5(/14日)群に46例(同:61.7歳、57%)、プラセボ群には50例(同:62.1歳、66%)が割り付けられた。205例が治療を完遂した。12週後の創傷範囲の平均縮小率はプラセボ群よりもHP802-247投与群が有意に良好で(p=0.0446)、なかでも0.5(/14日)群が最も優れていた(-15.98%、95%信頼区間[CI]:-26.41~-5.56、p=0.0028)。5.0(/7日)群の縮小率は-11.7%(-22.2~-1.17、p=0.0295)、5.0(/14日)群は-7.60%(-18.2~2.99、p=0.16)、0.5(/7日)群は-9.16%(-19.8~1.44、p=0.09)だった。有害事象の発現状況は5群で同等で、発生率が5%を超えたのは新規皮膚潰瘍と蜂巣炎(評価対象外の創傷部位)のみだった。著者は、「静脈性下腿潰瘍は、再生医療の導入を要することなく、同種新生児角化細胞と線維芽細胞のスプレー薬で治療可能であり、至適用量は0.5×106細胞/mLの14日ごとの投与であることが確認された」と結論し、「至適用量以外のレジメンにもある程度のベネフィットが認められており、HP802-247は静脈性下腿潰瘍治療の標準化に向けた大規模な無作為化試験の候補薬剤として有望と考えられる」と指摘する。

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第5回 損害の評価、素因減額:医師の責任を金銭にすると?

■今回のテーマのポイント1.身体損害の金銭への評価は、〔1〕治療費等積極的損害 +〔2〕逸失利益(消極的損害) + 〔3〕慰謝料で求められる2.不法行為の被害者が疾患を有する場合の損害額の減額方法として、逸失利益の減額(損害額の算定)と素因減額の方法がある3.良性疾患等回復可能な疾患においては、素因減額の方法をとる必要がある事件の概要患者(X)(48歳男性)は、平成12年5月23日、勤務中に右膝を負傷し、A病院にて局所麻酔下で異物(右膝の皮下組織と筋膜間に針金と砂様の異物、脛骨粗面付近の皮下組織内に鉛筆の芯用の異物)を除去しました。創部の痛みが強かったため、2日後の同月25日にXは、A病院に入院することとなりました。右膝の経過は順調であったものの、同月30日頃より、胸部不快感が生じるようになり、6月1日午前5時半頃、トイレから帰室する際に意識消失。すぐに意識を取り戻したものの、胸部不快感及び呼吸苦を訴えたことから、酸素投与及びニトロ舌下を行ったところ、胸部不快感及び呼吸苦は改善しましたが、心電図上、「II,III,aVF,V1,2 negative T,V3,4,5軽度ST上昇」を認めたため、Y1医師は、急性冠不全症又は急性心筋梗塞疑いと診断して精査加療のため、B病院に転院を指示しました。B病院転院後、医師Y2は、午前11時20分頃に冠動脈造影検査を施行したところ、器質的狭窄は認めなかったものの、エルゴノビン負荷テストにおいて、左前下行枝に90%狭窄を認め、同日朝の胸部不快感と同様の症状を認めたこと、ニトロール注入にて症状及び狭窄が改善したことから、冠攣縮性狭心症と診断しました。しかし、Xは、同日夜10時頃と翌午前3時頃に胸部不快感を訴え、翌朝午前6時50分頃、再び意識消失しました。同時点での血圧は80台、心拍数が48回/分、心電図上、右脚ブロック及びV2~4でST上昇を認めました。Y2医師は、心エコーを施行したところ、著明な右室の拡張及び心室中隔の奇異性運動を認めたことから、肺塞栓症を疑い、肺動脈造影検査を施行しようとXをベッド移動したところ、Xは、呼吸停止、高度除脈となりました。Y2医師は、心肺蘇生を行うと同時に、肺動脈造影を行ったところ、肺動脈内に血栓を認めたことから、肺塞栓症と診断し、血栓溶解剤の投与を行いましたが、6月4日午前6時24分に死亡確認となりました。原審(熊本地裁)では、Y1医師、Y2医師が肺塞栓症を疑わなかったことに過失は認められないとして、Xの遺族の請求を棄却しました。これに対し、福岡高裁は、Y1医師、Y2医師の過失を認め、下記の通り判示しました。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過患者(X)(48歳男性)は、平成12年5月23日、勤務中に右膝を負傷したため、同日勤務終了後、近医を受診しました。レントゲン写真上、右膝に異物が認められたことから、異物の摘出を試みるも、うまくいかなかったため、A病院に紹介しました。同日夕方、A病院にて局所麻酔下で異物(右膝の皮下組織と筋膜間に針金と砂様の異物、脛骨粗面付近の皮下組織内に鉛筆の芯用の異物)を除去し、ペンローズドレーンを留置し、外来フォローアップとしました。しかし、創部の痛みが強く、2日後の同月25日に患者X希望にてA病院に入院することとなりました。右膝の経過は順調であったものの、同月30日頃より、胸部不快感が生じるようになり、6月1日午前5時半頃、トイレから帰室する際に意識消失。すぐに意識を取り戻したものの、胸部不快感及び呼吸苦を訴えたことから、心電図を施行し、酸素投与及びニトロ舌下を行ったところ、胸部不快感及び呼吸苦は改善しました。同日午前9時頃に内科(医師Y1)紹介受診したところ、先に施行した心電図上、「II,III,aVF,V1,2 negative T,V3,4,5軽度ST上昇」を認めたことから、急性冠不全症又は急性心筋梗塞疑いにて精査加療のため、B病院に転院することとなりました。同日午前10時頃にB病院に到着。医師Y2は、午前11時20分頃に冠動脈造影検査を施行したところ、器質的狭窄は認めなかったものの、エルゴノビン負荷テストにおいて、左前下行枝に90%狭窄を認め、同日朝の胸部不快感と同様の症状を認めたこと、ニトロール注入にて症状及び狭窄が改善したことから、冠攣縮性狭心症と診断しました。しかし、Xは、同日夜10時頃と翌午前3時頃に胸部不快感を訴え、翌朝午前6時50分頃、再び意識消失しました。同時点での血圧は80台、心拍数が48回/分、心電図上、右脚ブロック及びV2~4でST上昇を認めました。Y2医師は、心エコーを施行したところ、著明な右室の拡張及び心室中隔の奇異性運動を認めたことから、肺塞栓症を疑い、肺動脈造影検査を施行しようとXをベッド移動したところ、Xは、呼吸停止、高度除脈となりました。Y2医師は、心肺蘇生を行うと同時に、肺動脈造影を行ったところ、肺動脈内に血栓を認めたことから、肺塞栓症と診断し、血栓溶解剤の投与を行いましたが、6月4日午前6時24分に死亡確認となりました。事件の判決判決では、遅くとも6月1日午前5時半頃の意識消失時(前医であるA病院入院時)には、Xが肺塞栓症を発症していたと認定し、「Y1医師が、Xの6月1日の意識消失等を虚血性心疾患によるものであると診断したのは、客観的には誤りであったものといわなければならない」とした上で、「もっとも、症状や心電図のみでは、肺塞栓症とその他の疾患、特に心疾患と鑑別診断することは極めて困難であるというのであるから、Y1医師が、6月1日午前9時ころまでにXにかかる上記のような所見を得ていたからといっても、Xが肺塞栓症に罹患していると診断することまで期待するのは無理である。とはいえ、急性肺血栓塞栓症においては、診断がつかず適切な治療が行われない場合には死亡の確率が高いこと、他方で、適切な治療がなされれば死亡率が顕著に低下することが知られていたのであるから、Y1医師としては、上記時点で、少なくとも肺塞栓症に罹患しているのではないかとの疑いを持つことが必要であり、それは十分可能であったといわなければならない」として、Y1が肺塞栓症を疑わず、その結果B病院転院時の診療情報提供書に肺塞栓症疑いと記載しなかったことを過失としました。Y2についても、「6月1日午後10時ころに至り、再び胸痛を訴えるに及び、また、その際行われた心電図検査の結果は、搬送された際に実施したものと同様に、肺塞栓症と考えても矛盾しないものであったということからすれば、遅くともこの時点では肺塞栓症を疑うべきであったといわなければならない」「しかるに、Y2医師は、上記Y1医師の診断結果を認識した後、もっぱらその疑いを念頭に置いて冠動脈造影検査、エルゴノビン負荷テストを施行したものであり、また、胸痛が持続する場合にはニトロペンを舌下投与すべき旨を指示しただけで、肺塞栓症を鑑別対象に入れることは6月2日朝に至るまでなかったというのであるから、この点につき、Y2医師には上記注意義務に違反した過失があるというべきである」として過失を認めました。その上で、「このような事情を考慮するならば、上記のとおり、Y1医師及びY2医師がともに過失責任を免れないとしても、直ちに全責任を負わしめるのはいかにも酷というべきである。そうであれば、結果に寄与したXの素因ないしは被害者(患者)側の事情として上記の諸事情を考慮し、上記不法行為と相当因果関係を有する損害額を一定の割合で減額するのが相当である」と判示し、過失相殺の法理を類推適用し、損害額の4割を控除し、約4,080万円の損害賠償責任を認めました。(福岡高裁平成18年7月13日判タ1227号303頁)ポイント解説不法行為責任が成立した場合、加害者は、当該過失によって生じた損害を金銭に評価した額を賠償する責任を負います。(1) 過失(2) 損害(3) (1)と(2)の間の因果関係↓不法行為責任成立↓生じた損害を金銭に評価↓当該評価額を賠償する責任を負う医療過誤訴訟においては、通常、「患者の死傷」が損害となります。この「人の死傷」という損害の金銭的評価は難しく、各国によって異なっているのですが、わが国においては、〔1〕積極的損害:入院・治療費、看護費用、交通費、葬祭費、弁護士費用等〔2〕消極的損害:逸失利益(被害者が生存していれば得たであろう利益(収入))〔3〕精神的損害:慰謝料の3つが認められることとなっています。この中で、最も高額となりがちなのが〔2〕の逸失利益であり、産科医療訴訟の賠償額が高額化する原因はここにあります(被害者の就労可能期間が最も長いため)。しかし、病院に治療に来る患者は、何らかの疾患を抱えています。したがって、たとえ医療過誤が発生し、患者が死亡した場合であっても、当該疾患により、就労不能であった場合には、逸失利益は“0”になります(損害額の算定の問題)。また、交通事故と被害者の疾患が競合して死亡という結果が生じた事案において、裁判所は、「被害者に対する加害行為と被害者のり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定※1を類推適用して、被害者の当該疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である。けだし、このような場合においてもなお、被害者に生じた損害の全部を加害者に賠償させるのは、損害の公平な分担を図る損害賠償法の理念に反するものといわなければならないからである」(最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁)と判示しています。これは、「素因減額」と言われている考え方です。被害者が疾患を有していた場合の損害額の減額方法はこれら2つの方法がありますが、医療過誤訴訟においては、多くの場合、損害額の算定の方法で処理されています。たとえば、がん患者が医療過誤によって死亡した場合には、損害額の算定による方法では、「医療過誤がなかったとしても余命は○年であり、その間、就労することは不可能であるので逸失利益は認められない」となり、素因減額の方法では、「医療過誤とがんがともに原因となって死亡という損害を発生させており、加害者に損害の全部(健康な同年代と同額の逸失利益等損害)を賠償させることは公平を失するので、過失相殺の規定を類推適用して、損害額を減額する」となり、どちらの方法をとっても、結果として、同程度の損害額の減額が認められることとなります。しかし、進行がんなどの治療困難な疾患については、どちらの方法でも同程度の結果となりますが、本件のように、うまく治療がなされれば根治可能な良性疾患等に関しては結果が異なってきます。すなわち、「医療過誤がない」=「肺塞栓症と早期に診断」ができていれば、健康な状態で長期就労可能となりますので、損害額の算定の方法では、減額ができないからです。本判決では、Y1、Y2に過失があるといえるかはともかく、このような場合には、素因減額の方法をとり、損害額を減額することができるということを示した判決です。世界中で、民事医療訴訟を原因とした医療崩壊が生じており、その対応のため、無過失補償制度を各国が導入してきています。無過失補償制度を導入するにあたり、最大の鍵となるのが、補償額の多寡であり、訴訟を行った場合に得られる金額に近い額の補償額を給付しなければ、結局、訴訟が選択されてしまいます。逆相続※2を認めるわが国においては、損害賠償額が高額となるため、無過失補償制度の運営が困難といわれています。また、そもそも、医療提供体制においては、低額の皆保険制度をとっているにもかかわらず、紛争が生じると、他の一般民事事件と同様に高額な損害賠償額となるのは公平を失するといえます。今後、医療過誤訴訟は増加の一途をたどることが予想されます。訴訟による医療崩壊が生ずる前に速やかに無過失補償制度を作る必要があり、その前提として、素因減額の適用拡大が必要となるものと思われます。 ※1民法第722条2項:被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。※2子供が不法行為により死亡した場合に、子供の逸失利益を親に相続させること。子供が生存していた場合、親が子の財産を相続することは通常ないこと等から、EU諸国では認められていない。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)福岡高裁平成18年7月13日判タ1227号303頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。最判平成4年6月25日民集46巻4号400頁

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